脳のはたらきを学ぼう②|「大脳皮質」は人間らしさを支える

心理学の学びと知識

私たちが考えたり、話したり、ものを見たり聞いたりできるのは、すべて「大脳皮質」という部分のおかげです。
脳の中でもとくに高度に発達したこのエリアは、わたしたちの人間らしい知的な活動を支えています。

この記事では、初心者にもわかりやすく、大脳皮質の基本的な構造と、それぞれの役割について紹介します。ふだんの生活ではなかなか意識しないかもしれませんが、ちょっとした知識が、私たちの「こころの動き」や「感じ方」を理解するヒントになるかもしれません。

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大脳皮質のかたち|左右に分かれた構造と役割分担

左右に分かれた脳

大脳皮質は脳の一番外側にある層で、見た目には左右対称に分かれています。この2つの半球(左脳と右脳)は「大脳縦裂(だいのうじゅうれつ)」という深いみぞで分かれていて、その下にある「脳梁(のうりょう)」という太い神経の束でつながっています。

見た目は左右対称でも、じつは機能はちがいます。たとえば、左脳は言葉の理解や話す力を担当し、右脳は絵や空間の認識を担当しているとされています。

研究でわかった左右のちがい

この左右の役割のちがいは、失語症分離脳の研究からわかってきました。たとえば、左脳の「ブローカ野」という部分を損傷すると、うまく言葉が話せなくなります。また、右脳と左脳をつなぐ脳梁を切断した患者(これを分離脳といいます)では、右の視野で見たものは言葉で説明できても、左の視野で見たものは説明できないという例もありました。

このことから、左脳は主に言語に関する情報処理を、右脳は視覚や空間にかかわる情報処理を得意としていると考えられています。


大脳皮質の地図|4つの「葉」とそれぞれの働き

表面のしわには意味がある

大脳皮質の表面には、しわやみぞがたくさんあります。その中でもとくに深いみぞを目印にして、大脳皮質は4つの「葉(よう)」に分けられます。それが「前頭葉」「頭頂葉」「側頭葉」「後頭葉」です。

この4つは、それぞれちがった役割をもっていて、私たちの行動や感覚をコントロールしています。

前頭葉:考えたり動いたりするときに活躍

前頭葉には「運動野」と呼ばれる部分があり、自分の意思で体を動かす働きをしています。また、「前頭連合野」は思考、計画、判断といった高度な知的活動にも関係しています。

また、左前頭葉には「ブローカ野」があり、ここが傷つくと「運動性失語」といって、言葉がうまく話せなくなります。

※連合野とは、感覚や運動に直接かかわらない“情報のまとめ役”のようなエリアです。次の章で簡単に説明します。

頭頂葉:体の感覚を感じ取る

頭頂葉には「体性感覚野(たいせいかんかくや)」があります。これは、皮膚で感じる温度や痛み、手足の動きの感覚などを処理する場所です。私たちが「冷たい」「痛い」「動いている」と感じるのは、このエリアがあるおかげです。

後頭葉:ものを見る情報を処理

後頭葉には「視覚野」があります。ここでは、目から入ってきた視覚情報を処理し、見たものの形や動きを認識しています。

補足:基本的に体の右半分で得た情報は左半球に、左半分で得た情報は右半球に送られて処理されます。しかし、視覚は少し複雑で、「右目で見たものが左脳へ」ではなく、「それぞれの眼球の右視野にあるものが左脳へ」といったように情報が送られます。

側頭葉:音を聞き、意味を理解する

側頭葉には「聴覚野」があります。ここでは、耳から入ってきた音の情報を分析し、何を聞いているのかを理解しています。

また、左側頭葉の「ウェルニッケ野」が損傷すると、「感覚性失語」といって、言葉を聞いても意味がわからなくなることがあります。


情報をつなげて考える力|連合野のはたらき

感覚や運動だけじゃない「連合野」

大脳皮質の中には、特定の感覚や運動に直接関係しない部分があります。これが「連合野(れんごうや)」です。じつは、人間の大脳皮質の約3分の2以上がこの連合野です。

たとえば「前頭連合野」は、思考や問題解決、感情のコントロールなどを担当します。また、後頭葉の「視覚連合野」は、見たものの形や色を総合的に判断する役割をもっています。

私たちの「こころ」を支える場所

この連合野があるからこそ、私たちはただ物を「見る」「聞く」だけでなく、「考える」「感じる」「覚える」といった複雑な心の働きができるのです。日常のふとしたひらめきや、「これ、前にも見た気がする」といった感覚も、連合野のはたらきによって生まれています。


まとめ|人間らしさを生み出す場所

大脳皮質は、ただの「脳の外側の部分」ではありません。そこには、話す・聞く・見る・感じる・考える…といった、私たちのあらゆる活動の土台が詰まっています。とくに、連合野がしっかり機能することで、私たちは「考える動物」としての人間らしさを持つことができているのです。

すこし難しい領域ですが、ちょっとした脳の知識をもっておくことで、「今日は前頭葉が働いてないな〜」なんて、ユーモアを交えながら、自分のこころや行動を見つめ直すきっかけになるかもしれません。


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