「何度もやっているのに、覚えられない!」
こんなふうに感じたことはありませんか?勉強や仕事で覚えなければならないことがたくさんあるけれど、どうしても頭に入らない。気づけば「自分は記憶力が悪いんだ」と落ち込んでしまうこともありますよね。でも、実はそれはあなたの記憶力が問題なのではなく、覚え方のコツを知らないだけかもしれません。ここでは、記憶を深く理解し、覚えるための方法をやさしく紹介します。覚えたことをしっかりと記憶に残すためのコツや、忘れにくくするための工夫もあわせてお伝えします。これからの勉強や仕事に役立つ記憶術を身につけましょう!
今回の参考書籍

記憶は3つのステップで動く
①覚える(記銘:きめい)
新しい情報を覚える最初のステップは、情報をしっかりと頭に入れることです。これを心理学では「記銘(きめい)」と呼びます。しかし、ただ漠然と見るだけでは、情報はなかなか頭に残りません。覚えるためには 意味づけがとても大切です。たとえば、「3141592」と並べられた数字を見たとき、意味を感じずただの数字の羅列だとすぐに忘れてしまいます。
でも、これを「円周率の最初の7ケタ」と覚えるとどうでしょう?数字が単なる記号ではなく、具体的な意味を持つ情報に変わり、ぐっと覚えやすくなります。このように、情報をただ受け入れるのではなく、自分なりに意味づけすることで、記憶は強くなります。
②しまう(保持)
情報が「覚えた」と思っても、それがすぐに消えてしまっては意味がありません。情報が定着するには、次に「保持」というプロセスが必要です。覚えたことを一時的な「短期記憶」から、もっと長く使える「長期記憶」へと移し変える必要があるんです。
短期記憶は、覚えたことがすぐに消えてしまいやすい、いわば「一時的なメモ帳」のようなものです。このメモ帳から、必要な情報を長期的に保存するためには、時間をかけて繰り返し復習したり、意味づけをしたりすることが重要です。実際、声に出して読むことで、頭に定着しやすくなります。また、絵を描いてみたり、ストーリーにしてみたりすることで、情報を深く覚えることができます。
③思い出す(想起)
情報を覚えた後には、いざというときにその情報を取り出す「思い出す」ステップが待っています。これを心理学では「想起(そうき)」と呼びます。たとえば、試験のときに問題を見て「うーん、なんとなく知っているけど思い出せない」と悩むことがあるかもしれません。
そのようなとき、情報を思い出しやすくするためには、覚えるときに視覚や聴覚、感情といったいろんなヒントをつけておくことが大切です。たとえば、覚えた単語に色をつけて視覚的に覚えるとか、気持ちと一緒に覚えると、思い出しやすくなります。「あの時の気持ち」を思い出すことで、記憶がよみがえることがあるんです。
短期記憶を知る|限られた容量を最大限に活かす
短期記憶の定員は7つ前後
短期記憶には、容量に限りがあります。具体的には、いっぺんに持てる情報は約7つ前後だと言われています。これを「マジカルナンバー7」と呼びます。たとえば、電話番号や郵便番号が3つの数字に分けて覚えることが多いのは、こうした限界に対応するためです。
情報を一度に多く覚えようとしても、脳はすぐに処理しきれません。そのため、情報を適切に「かたまり(チャンク)」にして覚えることがポイントです。数字を「090-1234-5678」と区切って覚えるのも、実はこの「チャンク化」が活用された例です。
リハーサルで長期記憶の箱へ
短期記憶から長期記憶へ情報を移すためには、リハーサル(反復練習)が有効です。短期記憶に入れた情報を何度も繰り返し声に出して読んだり、書き出したりすることで、情報は長期記憶に転送されます。この過程を「リハーサル」と言います。
また、何度も繰り返すだけではなく、情報に関連する絵を描いてみたり、他の情報と組み合わせたりすることで、さらに深い記憶として定着させることができます。記憶の定着には、何度も復習することが不可欠です。
長期記憶の2つのタイプ|「言葉で覚える記憶」と「体で覚える記憶」
言葉で説明できる「宣言的記憶」
長期記憶には2つのタイプがあります。そのうちのひとつ「宣言的記憶」とは、「言葉で説明できる記憶」のことです。たとえば、教科書で学んだ内容や、歴史の出来事、英単語などがこれにあたります。
宣言的記憶はさらに「エピソード記憶」と「意味記憶」の2つに分かれます。エピソード記憶は、自分の体験に関する記憶(修学旅行で行った場所や食べた料理など)です。意味記憶は、事実や知識に関する記憶(東京タワーの高さや有名な数学の公式など)です。
体が覚える「手続き記憶」
もう一つの「手続き記憶」とは、「日常生活の中で体が覚える記憶」のことです。たとえば、自転車の乗り方や、ピアノの弾き方などは手続き記憶にあたります。これらは言葉で説明するのが難しいですが、一度覚えると忘れにくいのが特徴です。
手続き記憶は、繰り返し練習を重ねることで身につくものです。自転車に乗れるようになったら、あとはほとんど忘れることなく乗れますよね。こうした「体で覚える」記憶は、言葉や理屈で覚えるものよりも、長期的にしっかりと残ります。
まとめ|今日からできる“記憶”のコツ
覚えるための基本は、次の3つのコツです。
- 意味を付ける:覚えるべき情報に、自分なりの意味をつける。語呂合わせやストーリーで工夫すると覚えやすくなる。
- かたまりにする:情報を小さなかたまりにして覚える。長い数字や複雑な情報を、短いブロックに分けると覚えやすくなる。
- 何度かくり返す:繰り返し復習することで、記憶が長期メモに定着する。声に出して読む、ノートに書くなどして、情報を何度も再確認しよう。
「どこかで聞いたことあるよ!」ということばかりかもしれませんが、記憶の仕組みを理解して実践することで、もっと「覚える力」がアップするはずです。最初は少し面倒かもしれませんが、ぜひ毎日の勉強や仕事に役立ててください。覚えることを楽しみながら、少しずつ実践していきましょう!
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