たとえば、「ストレスがどれくらいあるか」を知るためにアンケートに答えたり、「自分のパーソナリティ」を調べるために質問紙を使ったりすることがありますよね。心理学では、こうした方法で“こころの状態”を数値やデータでとらえることがよくあります。
でも、その結果が本当に正しくて、毎回ぶれずに測れていると言えるのでしょうか?
そんなときに大切になるのが「信頼性」と「妥当性」という考え方です。この記事では、心理学の基本として知っておきたいこの2つの違いを、できるだけわかりやすく紹介します。
今回の参考書籍

「信頼できる」ってどういうこと?~信頼性の基本~
信頼性とは「ぶれにくさ」
心理検査を作るときに大切なのが「信頼性」。これは、何度測っても同じような結果が出る“ぶれにくさ”のことです。たとえば、体重計が毎回違う数字を出したら信用できませんよね?心理検査でもそれと同じです。
代表的なチェック方法:3つのテスト方法
信頼性を確かめる方法としては、以下のようなものがあります。
- 再テスト法:同じ人に2回テストして、結果が似ていればOK。→ 時間がかかるのがネック。
- 平行テスト法:内容が似た2つのテストを用意して比べる方法。→ テストを作るのが大変。
- 折半法:1つのテストを2つに分けて比べる方法。→ 分け方にコツがいる。
今主流なのは「内的整合性」
最近の研究では、内的整合性(ないてきせいごうせい)という考え方が重視されています。これは、テスト内の質問がちゃんと「同じものを測っているか?」を見る方法です。
その代表的な指標がクロンバックのα係数(アルファけいすう)です。
この数値は0~1の範囲をとり、 0.7~0.8以上なら「信頼性が高い」と言われています。
本当に測りたいことが測れている?~妥当性の視点~
妥当性とは「ちゃんと目的を測れているか」
信頼性が「ぶれにくさ」だとすれば、妥当性は「目的に合った測定ができているか」です。たとえば「ストレス度」を測るテストなのに、「集中力」の傾向ばかり測っていたら、それは妥当ではありません。
妥当性の3つのタイプ
妥当性には、見る角度によっていくつかの種類があります:
- 内容的妥当性:測るべき内容がちゃんと網羅されているか。
- 基準関連妥当性:外の基準(たとえば既存のストレス尺度)とちゃんと関係があるか。
- 構成概念妥当性:本当にその心理的な構成(たとえば自己肯定感)を捉えているか。
最近注目されている「構成概念妥当性」
近年では、これらすべての妥当性をひっくるめて、構成概念妥当性が最も重要という考え方が主流になっています。とはいえ、これをきちんと確かめるのはとても難しく、だからこそ丁寧な研究や検証が求められます。
まとめ|「信頼性」と「妥当性」は心を測る土台
「信頼性」と「妥当性」は、心理学においてデータの“正しさ”や“意味の深さ”を支える大切な土台です。信頼性は「どれだけブレなく安定しているか」、妥当性は「本当に知りたいことを正しく測れているか」という視点でした。
私たちが目にする心理に関する研究結果や、質問紙で得られた数値も、これらの考え方をもとに慎重に検討されています。つまり、信頼性と妥当性を理解することは、心理学の知識を「うのみにしない力」や「より深く考える力」につながります。
最初は少しとっつきにくい言葉かもしれませんが、実は心理学のすみずみに関わる基本でもあります。これから心理学を学ぶうえで、ぜひ知っておきたい大事なキーワードとして、頭の片隅に置いておいてくださいね。
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