「愛着」とは?|こころのつながりが人生を育てる

心理学の基本

赤ちゃんが「泣く」「笑う」「すがりつく」といった行動をするのは、ただの本能的な反応ではありません。実はそれらの行動には「こころのつながり」をつくるという大切な役割があります。

この記事では、心理学の中でも大切なキーワードである「愛着」について、初心者の方にもわかりやすくご紹介します。子どもの発達や大人の人間関係にも深く関わるこのテーマを知ることで、自分や他人との関係を見つめ直すきっかけにもなるはずです。

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愛着の基本|なぜ「こころのつながり」が大切なのか?

愛着とは何か?

愛着」とは、赤ちゃんとお世話をしてくれる人とのあいだに生まれる、こころのつながりのことです。心理学者のジョン・ボウルビィによって提唱されました。

この絆は、子どもが安心して育つための土台になります。お母さんやお父さんなど、特定の大人がそばにいてくれることで、赤ちゃんは「ここにいていいんだ」と安心し、世界に対して興味をもつようになるのです。

施設症から見えた愛着の大切さ

かつて、病院や孤児院に長く入っていた子どもたちの間で、発達の遅れや健康問題が多く見られることが問題となりました。これを施設症(ホスピタリズム)といいます。

この原因を調べた研究者スピッツは、母親との関わりが極端に少ないこと(母子分離)が原因だとしました。続いてボウルビィは、愛着の欠如が子どもの発達に深刻な影響を与えると考え、愛着理論を発展させていきました。


愛着が育むもの|安心感・行動力・人との関わり方

「安全基地」としての親の存在

赤ちゃんにとって、親は安全基地のような存在です。安心できる人が近くにいるからこそ、赤ちゃんは安心して周囲を探索し、学んでいけるのです。
たとえば、公園で遊ぶ子どもが、時々親の顔を確認するように戻ってくる姿を思い浮かべてみてください。これはまさに「安全基地」を使って成長している姿なのです。

有能感と感受性の土台になる

愛着がしっかりしていると、子どもは「自分の行動がまわりに影響を与えられる」という有能感を育てることができます。泣いたときに抱っこしてもらえたり、笑ったら笑顔で返してもらえる経験が、それを教えてくれるのです。
また、親との「微笑みのやりとり」などを通して、感受性も育まれます。こうした日々のやりとりが、子どもの心の発達を大きく支えているのです。

内的作業モデルがつくる対人関係の土台

ボウルビィは、幼いころに育まれた愛着が、やがて内的作業モデルとなって、他人との関係の持ち方にも影響すると言いました。
たとえば、「大人は優しくて信頼できる」という経験をした子は、人との関わりにも安心感をもちやすくなります。逆に、関係が不安定だと、「人は自分を傷つけるかもしれない」と感じやすくなるかもしれません。


愛着の研究|実験で見えた子どもたちのこころ

ぬくもりを求める本能:ハーローの代理母実験

心理学者ハーローの有名な実験では、赤ちゃんザルは、ミルクをくれる金属の代理母よりも、何もくれないけれど布でできた柔らかい代理母にしがみつくことを好みました。

この結果から、単に食べ物を与えるだけではなく、「スキンシップ」や「安心感」が愛着を育てる上でとても重要であることがわかります。

子どもの反応でわかる愛着のタイプ

エインズワースは「ストレンジ・シチュエーション法」という方法で、子どもの愛着の安定性を調べました。
お母さんが部屋から出たり戻ったりする状況で、子どもの反応には3つのタイプが見られました。

  • 安定型:お母さんがいなくなると泣くけれど、戻ると喜んで近づく
  • 回避型:お母さんがいなくなっても気にしない、戻ってきてもあまり反応しない
  • アンビバレント型:いなくなると不安になるが、戻ってきても素直に喜べない

こうした違いは、日頃の関わり方や安心感の度合いによって変わると考えられています。


まとめ|愛着の理解はこころのつながりを見直すきっかけに

愛着は、子どもの発達に深く関わるだけでなく、大人になってからの人間関係にも大きな影響を与えます。どんなふうに人を信じるか、どんなふうに甘えたり頼ったりできるかといった行動は、幼いころに育まれた愛着のかたちとつながっているのです。

私たちは、自分の過去を知ることで、今の人間関係に気づきを持ち、少しずつ「安全基地」のような安心感を広げていくことができます。親として子どもに接するときにも、自分自身がどんな関わりをされていたかを見直すことがヒントになるかもしれません。

「愛着」は専門的なテーマにも思えるかもしれませんが、日常のふとしたやりとりの中にヒントがたくさん隠れています。今日のあなたの「声かけ」や「まなざし」も、誰かにとっての安全基地になるかもしれません。


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