ドキドキしたり、不安になったり、楽しいことを思い出して笑顔になったり…。そんな「こころの動き」は、脳の中のある場所が関係しています。それが今回のテーマ「大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)」です。
本記事では、感情や記憶に深く関わる「大脳辺縁系」のはたらきを、わかりやすく解説していきます。難しい言葉もできるだけかみくだいて紹介するので、初めて学ぶ人も安心して読み進めてみてください。
今回の参考書籍

感情と記憶の中枢|大脳辺縁系ってなに?
「感情の脳」と呼ばれるしくみ
「大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)」は、脳の中心部にあるいくつかの器官の集まりです。名前は難しそうですが、はたらきはとても身近。「感情」や「記憶」、「意欲」など、内側ではたらくこころの動きに関係しています。
大脳辺縁系はとくに「情動(じょうどう)」=気持ちのゆれ動き、を生み出す中心です。好き・嫌い、嬉しい・怖いといった感情の多くは、この場所から始まっています。
大脳辺縁系をつくる3つの重要な部分
大脳辺縁系はいくつかの部位で構成されていますが、なかでも代表的なのは以下の3つです:
- 海馬(かいば):短期記憶の保持、新しい長期記憶をつくる
- 扁桃体(へんとうたい):感情、特に「快・不快」を判断
- 帯状回(たいじょうかい):感情や注意、意思決定に関与
このように、大脳辺縁系は「感じる」「覚える」といった心の動きを支えているのです。
感情と記憶のコンビプレー|海馬と扁桃体の連携
海馬:記憶のはじまりをつくる場所
海馬は、私たちが体験した出来事を記録する「記憶の入り口」です。たとえば、初めて行った旅行や、大切な人との会話など、印象的な出来事を「短期記憶」に一時的に保存し、それを「長期記憶」へと送り出すはたらきをしています。
もし海馬が損傷すると、新しいことを覚えられなくなってしまう「順行性健忘(じゅんこうせいけんぼう)」という状態になることがあります。つまり、今この瞬間を思い出に残すために、海馬はとても重要な役割を果たしているのです。
扁桃体:感情のセンサーのような働き
扁桃体は「喜び」「恐怖」「不安」などの情動を生み出す場所です。特に「恐怖」「不安」「怒り」などに敏感に反応し、その状況を海馬と連動して記憶に結び付けて保存しておくことで、同じような危険を避ける“警報機”として働いてくれます。
たとえば、夜道で怖い思いをした経験がある人は、同じような道を歩くと不安を感じることがありますよね。これは、海馬が記憶していた情報を扁桃体が読み取り、「これは危ないかも」と感情を生み出しているからです。
まとめ|感情は私たちを守るサイン
大脳辺縁系は、感情や記憶を生み出す「こころの中枢」ともいえる存在です。海馬が体験を記録し、扁桃体がその記憶をもとに感情を生み出します。
感情は決して“わがまま”ではありません。むしろ、「ここに注意して!」という大切なサインです。大脳辺縁系、とくに扁桃体が過去の経験から「この状況は危ないかもしれない」と判断して感情を出しているのです。
つまり、不安や恐怖も「生きる力」として私たちに備わっているもの。無理に押さえつけるのではなく、うまく受け入れて対処していくことが、こころの健康には欠かせません。
コメント