なんとなく「そう思ったから」「そんな気がしたから」――私たちは、日常の中で無意識のうちに判断をくだしています。実はその判断には、思い込みや偏りが知らず知らずのうちに入り込んでいることがあるのです。この記事では、人の考え方にひそむ“認知バイアス”について、初心者にもわかりやすく紹介していきます。
「なんであのとき、あんな選択をしちゃったんだろう?」そんな疑問の裏には、もしかしたらこの“こころのクセ”があるかもしれません。代表的なバイアスを知ることで、自分の考え方を客観的に見つめるヒントを得てみましょう。
今回の参考書籍

思い込みのワナ|「もっともらしさ」にだまされる
連言錯誤とは?
たとえば、「Aさんは読書好きで内向的です。では次のどちらがAさんに当てはまりそうですか?」
- Aさんは図書委員である
- Aさんは図書委員で、環境問題にも熱心である
多くの人が「2」を選びがちですが、落ち着いて考えると「1」のほうが確率的には高いのです。これは連言錯誤と呼ばれるバイアスです。
「図書館員で、環境問題にも熱心」という複数の条件(連言)は、単なる「図書館員」よりも条件が厳しい=確率は下がるはず。でも、もっともらしい情報が追加されると、なんだか“ありそう”と感じてしまうのです。
ステレオタイプと代表性ヒューリスティック
このような判断の背景には、「いかにもそれっぽい」と思う事柄の発生確率を過大評価してしまうという代表性ヒューリスティックがあります。
上の例でいえば、「読書好き=真面目」だから社会問題にも関心がありそう、などといったステレオタイプ(固定的なイメージ)によって、「Aさんっぽいな」と感じてしまうのです。
バイアスのいろいろ|日常にも潜む“思考のクセ”
ギャンブラーの錯誤
コインを投げて「表」が5回連続で出たとき、「そろそろ裏が出るはず」と思ったことはありませんか?
同じ出来事が続くと、次は異なることが起こりそうだと感じる現象をギャンブラーの錯誤といいます。実際にはコインを投げるたびに表と裏の確率は同じ50%なのに、連続したパターンを見たことで、「偏りが帳尻を合わせる」という錯覚が生まれます。
コンコルド効果(サンクコスト効果)
映画館でつまらない映画を観ているとき、「せっかくチケット買ったんだから、最後まで観よう」と思った経験はありませんか?
これはサンクコスト効果と呼ばれます。引き返すほうが合理的でも、もう取り戻せない過去の投資(お金・時間など)が大きいほど、決断しにくくなってしまうのです。もったいない気持ちが前に出てしまうのが人間です。
フレーミング効果
「この手術は成功率90%です」と言われるのと、「失敗率10%です」と言われるのでは、まったく同じ意味なのに後者のほうが不安に感じませんか?
これがフレーミング効果です。言い方の“枠組み(フレーム)”によって、受け取ったときの印象や判断が変わることがあるのです。
まとめ|バイアスを知って、自分の“考え方のクセ”を見つめなおす
私たちの思考には、さまざまな“バイアス”がひそんでいます。連言錯誤やサンクコスト効果などは、一見すると自分とは無関係に思えるかもしれませんが、実は日常のあちこちに登場しています。
こうした「思考の偏り方」を知ることで、「なんとなくそう思った」判断をちょっと立ち止まって見直す力がついていきます。大切なのは、自分が悪いと責めることではなく、「こころって、そういうふうに働くんだな」と知ることです。ぜひ、今日から身近な場面で「もしかして、これが認知バイアスかも?」と気づいてみてください。それだけで、考え方の幅がぐっと広がるはずです。
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