聴覚系の神経構造|「聞く」ためのしくみを知ろう

心理学の学びと知識

わたしたちが音を「聞く」とき、実は耳だけでなく、脳の中でもたくさんのはたらきが起こっています。音は空気の振動として始まり、耳を通って脳に届くまでに、いくつもの段階を経て「意味のある音」として知覚されます。

この記事では、「音がどのように私たちの脳に届き、どうやって“聞こえる”と感じているのか」という仕組みを、できるだけわかりやすく解説していきます。音楽、会話、環境音……あなたのまわりの音がどう聞こえているのか、一緒に探ってみましょう。

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音が脳に届くまで|耳から脳への“音の旅”

耳が音をキャッチする

音は空気の振動として、まず耳介(いわゆる耳の外側)で集められます。その振動は外耳道を通って鼓膜に届き、鼓膜を震わせます。この震えが「音のはじまり」です。

続いてその振動は中耳にある3つの小さな骨(耳小骨)によって約22倍に増幅され、内耳にある「蝸牛(かぎゅう)」というカタツムリのような形をした器官に伝えられます。

音の振動が“電気信号”に変わる

蝸牛の中では、音の振動が「電気信号」に変換されます。これは、わたしたちの神経が理解できる言葉のようなものです。その信号は「聴神経」を通って脳の中脳へと送られ、最終的に側頭葉にある「一次聴覚野(いちじちょうかくや)」に届きます。ここで聴覚から送られてきた情報が処理されてようやく、わたしたちは音を“聞いた”と感じるのです。


音の特徴って何だろう?|大きさ・高さ・音色の正体

音の「大きさ」と「高さ」はどう決まる?

私たちが音を聞いたとき、「大きい」「高い」「低い」と感じることがありますよね。
このうち、大きさは音の“振幅”(空気の揺れの幅)が関係しています。振幅が大きいと、大きな音に、小さいと小さな音になります。

一方、音の高さは音波の“周波数”(揺れの細かさ)によって決まります。周波数が高いと高音に、低いと低音に聞こえます。

音色ってなに?

「同じ高さの音でも、ピアノとギターでは違って聞こえる」と感じたことはありませんか?
これは「音色(おんしょく)」と呼ばれる違いで、複数の周波数の組み合わせ(倍音)によって生まれます。つまり、どんな音の成分を含んでいるかによって、音の“個性”が決まるのです。


音をどう聞き分けているの?|音の処理と脳の不思議な工夫

純音と複合音のちがい

純音(じゅんおん)は、1つの周波数だけからなる単純な音です。たとえば、電子音やチューニング音がそうです。一方で、日常で聞く多くの音は複合音(ふくごうおん)で、いくつもの周波数が重なっています。私たちの脳は、これを自然に聞き分けています。

高音と低音を感じるしくみ

人間が音の高さをどう感じるかについては、ふたつの仮説があります。

  • 時間説:周波数に応じて聴覚神経を振動させる速度が変わるため、その違いを判別しているとする考え方。低い音(低周波)の処理をうまく説明する説です。
  • 場所説:基底膜という内耳の一部が、音の高さごとに異なる場所で反応するという考え方。主に高い音の処理をうまく説明する説です。

現在は、それぞれが周波数ごとにはたらき、互いを補完しているという考えが主流です。人間の聴覚はとても複雑な仕組みで音の高さを感じ取っていることがわかります。

1つの音から“複数のメロディー”が聞こえる?

実際には連続した1つの音の流れなのに、複数の音のまとまりが鳴っているように聞こえることがあります。これは「音脈分凝(おんみゃくぶんぎょう)」という現象です。

たとえば、単音しか出せない楽器でも、リズムや高さを工夫すると、まるで2つのメロディーを同時に奏でているように感じるのです。これは、脳が音を“グループ分け”して処理しているからこそできる芸当です。


まとめ|日常にひそむ“音”をみつけよう

私たちは毎日、数えきれないほどの音に囲まれて暮らしています。音楽を楽しむとき、誰かと会話するとき、鳥のさえずりや雨音を感じるとき——そのすべてが、耳と脳のチームプレーで成り立っています。

この記事で紹介したように、「聞こえる」ことにはさまざまなステップと神経の働きがあります。次に音楽を聴くとき、ちょっとだけ耳をすましてみてください。そこにある“音の旅”を想像することで、いつもの聞こえ方が少し変わって感じられるかもしれません。


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