赤ちゃんが自然に立ち上がったり、歩いたり、言葉を話し始めたりする姿を見て、「教えたわけじゃないのに、すごいな」と思ったことはありませんか?
実は、こうした発達には「心と体の準備」が深く関係しています。この記事では、ゲゼルという心理学者が提唱した「成熟優位説(せいじゅくゆういせつ)」について、わかりやすく解説していきます。学びにおいて「タイミング」がどれほど大切か、あなたもきっと納得できるはずです。
今回の参考書籍

成熟優位説とは?|心と体の準備が整うのを待とう
レディネスとは何か?
成熟優位説のカギとなるのが「レディネス」という考え方です。
レディネスとは、学習するための心と体の準備が整った状態を指します。たとえば、自転車に乗る練習をするとき、まだバランス感覚が未発達の子どもに無理に教えても、なかなかうまくいかないですよね。
ゲゼルは、「学びにはこのレディネスが整っていることが必要だ」と主張しました。
階段のぼりの訓練実験
この考えを証明するために、ゲゼルは有名な実験を行いました。
生まれたばかりの一卵性双生児を使って、片方の赤ちゃん(T)には生後45週目から6週間、もう片方(C)には生後53週目から2週間だけ階段をのぼる練習をさせたのです。
驚くことに、たった2週間しか練習していないCのほうが、早く上手に階段をのぼれるようになりました。
つまり、どれだけ早く練習しても、心と体の準備(レディネス)ができていなければ、学びはうまく進まないことがわかったのです。
行動主義への反論
当時は、ワトソンという心理学者が「人の発達は環境からの学習がすべて」と主張していました(これを行動主義といいます)。
でもゲゼルは、発達には「環境」だけでなく、「内側から自然に育つ力(成熟)」が大きな役割を果たすと考えました。
この考え方が、行動主義に対する大きな反論となったのです。
素質についての考え方|環境閾値説もチェック!
環境閾値説とは?
成熟優位説と関連した考え方に、「環境閾値説(かんきょういきちせつ)」というものもあります。
これはジェンセンという研究者が提唱した説で、「もともと持っている素質(才能)が、環境によって引き出されるかどうか決まる」という主張です。
つまり、「成熟による発達のタイミングや程度は、素質とそれを引き出す環境によって決まる」とも言い換えられます。
素質の特性によって影響度が違う
ジェンセンによれば、すべての才能が同じように環境に左右されるわけではありません。
たとえば、身長や言語能力は、環境の影響をあまり受けずに自然に発現することが多いです。
でも、スポーツや音楽の才能などは、適切な環境がなければ発揮されにくいと言われています。
つまり、素質だけではなく、周りの環境が「花を咲かせる」ためにとても重要だということですね。
成熟と環境、どちらも大事
ここまで見ると、「結局、成熟と環境、どちらが大事なの?」と思うかもしれません。
実は、両方大切なのです。成熟によって「準備」が整い、環境がその「芽」を育てる。
これを知っておくと、学びや成長を焦らず、温かく見守る視点を持てるようになります。
まとめ|学びのタイミングを焦らず、見守る心を持とう
私たちはつい、「早くできるようになってほしい」と焦ってしまいがちです。
でも、成熟優位説が教えてくれるのは、「人にはそれぞれの準備期間がある」という大切なメッセージです。
日常生活でも、できないことにイライラせず、「今はまだレディネスが整っていないだけ」と受け止めることができたら、もっと優しく、のびのびと学びを応援できるはずです。
ぜひ今日から、あなた自身や周りの人に対して、「焦らず、でもチャンスが来たらしっかり応援する」気持ちを持ってみてくださいね!
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